あれ、どこかでお見かけしたお名前が…と思ったら、「階段がわかる本」の著者、中山さんと、長沖さんではないですか。「階段」の次は「窓」ですか。これは読まざるを得ません。
本書はリフォームのための本ではありません。しかしリフォームでも、窓の位置や、形を変えたりするのは、よくあることです。リフォームにも役立つ面白い本に違いありません。
前書きに、窓とは、
建築の外観を決定づける要素の一つ
であるとともに、
室内環境をコントロールする重要な装置
でもある、と述べられています。つまり、
デザイン性と機能性などを両立
させなければならないものであり、それは、
専門家といえども、技術的に、やさしいことではない
と、いうものなのだそうです。さらに、
美しい景色を眺めたいが、逆に外から覗かれる心配もある。また、大きな開口部は心地よい陽光を室内に導いてくれるが、反面、冷暖房の負荷となる面もある。
と、相反する要素を持つのが窓である、とも述べられます。故に窓は、建築のデザインで最も難しいとされているそうです。
私が住んでるアパートの窓なんか、なんの考えも無しにベチャッと付いてるように見えるので、窓がそんなに難しいものとは思いもしませんでした。色々いっしょにしちゃダメなんでしょうけど。
章を抜き出してみます。
世界各地の窓の歴史が紹介されます。窓は、その地域の気候、文化、宗教的背景によって形が大きく変わる、ということを、世界各地の建築物のイラストで例示します。
同じく、日本の各地方の特徴的な歴史的建造物の窓も、その多様性が示されます。今やどの地方でも同じ顔の建売住宅ですが、昔は豊かであったのだなあ。
①窓辺を楽しむ…出窓的な使い方や、小さなコーナーとしての窓辺の使い方のアイデア。パパの書斎とか、ママたちの溜まり場とか。
②景色を取り込む…眺望を取り込むための窓のアイデア。こんな海辺の高台に住んでみたいものです。
③心地よい光を導く…採光のためのアイデア。建物を上に伸ばして光を取り入れるプランでは、日照についての斜線制限みたいなものに引っかからないか心配です。
④外部との接点を工夫する…中と外とのつながり、連続性を作るためのアイデア。開放感とプライバシー保護は表裏一体です。
⑤開口とプランニングの妙技…開口部を家のどこに持ってくるかのアイデア。家の立地や規模に合わせて、快適さを追求します。
⑥建具と間仕切りを使いこなす…家の中で部屋をどう仕切るかのアイデア。建具は一種の窓ととらえられるでしょうが、棚で仕切ったりもしています。
いわゆる窓の基礎講座。窓や建具の種類、特徴、名称、構造などを解説します。
私が買うのはきっと街中の狭小住宅で、窓を開ければ隣の家の壁が迫っているような、そんな家でしょう。この本では、大邸宅を想定した開放的な窓のプランから、私が買うような狭い住宅でのプランまで、快適さを得るための様々なアイデアが示されています。
筆者は前書きの中で、
アイデアの中には構造、法律などの制約によって実現できない場合もあると思う
と述べていて、これらのアイデアが、必ずしも現実的ではないことを認めています。しかし、アイデアの一部を取り入れて、リフォームに活かすことは十分に可能です。例えば、壁の一面を、柱も筋交いも見せていいから、はめごろしのガラス窓にしてみる、なんていう発想はなかなか出てきません。そういう発想の転換、気付きをもたらしてくれる本だと思います。
ちなみに本に挿入された図面やデザイン画は、「階段がわかる本」と同じく手書きで、味わいがあります。両方とも著者の中山さんが描いておられるようですが、比べてみると微妙にタッチが違い、「階段がわかる本」の方が、線が華奢で良かったような…?