《リフォームの本》建てる前に読む 家づくりの基礎知識(日経アーキテクチュア編)

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私は中古の家を買って、リフォームして住もうと思っています。でも家のことについての知識はゼロです。このままでは不動産屋さんとか、家を建てる設計屋さんとかと話しても、きっと意思の疎通が図れません。疎通はできなくても家は建つでしょうが、いろんなことを理解できればより楽しいでしょうし、何もわからないままよりは不安も少ないでしょう。

ということで本を読んでみます。今はどんな本を読めばいいのかさえわかりません。とりあえず図書館に行っていろいろ借りてみることにします。


『建てる前に読む 家づくりの基礎知識』(日経アーキテクチュア編/日経BP社/2014)

リフォームに限定した本ではありませんが「基礎知識」というところに惹かれてみます。
前書き冒頭に「住宅の建て主とつくり手の間にある『言葉の壁』を取り除く本」とありまして、建築の専門用語を素人にもわかりやすく解説してくれる本、ということのようです。内容を6章にわけて、それぞれ専門家が聞き手の質問に答えながら講義する、という形をとっています。イラストも親しみやすく、読みやすいです。

この本は「日経アーキテクチュア」という、前書きにもありますが建築の「プロが読む本」の連載をまとめたものです。だからかどうか、ど素人が読むとわかりにくい語句がところどころ残っていて、たまに「言葉の壁」を感じてしまいます。でもこれ以上レベルを下げると説明だらけになるでしょうから、実はこれでちょうどいいのです。素人はどうせ、解説された語句も、へええと思った瞬間すぐに忘れてしまうのですから。試験のために覚えるわけではないのです。

家を建てる前に必ずしも読まなければならない本とは思いませんが、建築に限らず、いろんなモノとか機械とかの構造や内部の仕組み、仕掛け、細部の仕上げなど、ちまちまと規則正しく収まっている感じが好きな方にとっては、すごく面白い本です。章を抜き出してみます。

第1章 省エネの基本 講師:宿谷昌則

いかにしてエネルギーを使わない家を建てるか、ということではなく、快適さを追求すると省エネ住宅になってしまう、と読みました。家の断熱、遮熱、気密性を高めることで冷房、暖房のエネルギーの使い方も変わってきます。語句の説明はありますが難しいです。

第2章 木造住宅   講師:三澤康彦、三澤文子

日本の戸建住宅の8割は木造ですが、使われるのは価格の安い外国産の木材が大半です。そんな状況の中、国産材の良さを訴え、積極的に取り入れる建築家さんの講義です。国産材の現状、一本の木が部材になるまでの工程、木造建築の構造、耐震、断熱、防火など木造建築の可能性が、語句の意味とともに多岐にわたって解説されます。

第3章 住宅の納まり 講師:伊礼智

「納まり」ってなんでしょう? 見た目の印象、といった意味でしょうか。「壁と柱の納まりがいい」なんていう言い方かと思います。収納のことではありません。意匠、デザインのことですね。
この章が一番好きです。建築家というものは、ひとつひとつこんな細部にまでこだわっているのだなあと驚かされます。全ては美しく、心地よく、住みやすくするためのこだわりです。
「納まり」は壁、柱、床、天井、建具、玄関、庇、階段、キッチン、浴室、トイレ、屋根、外壁、デッキ、バルコニー、住宅のありとあらゆる場所で考えられています。講師の伊礼さんの手法で特に驚いたのは「階段は1坪」「トイレは1畳」に納めるという部分です。建築家って階段とかトイレとか、無駄に広く取りたがるものだと思ってました。認識を改めます。

第4章 住宅の設備  講師:山田浩幸

「設備」と言われてもピンと来ませんが、住宅のいろいろを人体に例えるとこうなるそうです。

・意匠設計→容姿
・構造設計→骨格
・設備設計→内蔵・神経・血管

設備設計は給排水衛生設備、空気調和(空調)換気設備、電気設備の大きく3種類に分けられて、これらがうまく機能して初めて家の健康が保たれる、とのことです。確かに。目に触れないだけ意識されにくい部分ですが、その重要性がわかります。

第5章 住宅の構造  講師:小西泰孝

住宅の構造には木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造があります。ここでは鉄骨造と鉄筋コンクリート造の住宅構造について解説されます。私はきっと鉄骨にかかわることはないでしょうから、さすがにあまり興味が湧きませんでした…

第6章 住宅の法規  講師:本田徹、草刈直子

建築基準法、都市計画法についての講義です。優しく解説してくれていますが、それでもまだ取っ付きにくいですね。法規を完璧に理解するのは難しいですし、そこは専門家に頼るのですが、ちょっとでも知っておけば不動産の情報を読み解くのに役立ちます。建ぺい率とか容積率とか接道義務とか。
増改築を行う時の法規についても触れられています。私は古い家を買ってリフォームしようとしていますが、法規的には本当に問題ないのでしょうか? 不動産屋さんは皆さん気にしなくても大丈夫とおっしゃいますが…。ちゃんと勉強しないとダメですね。


この本は「家づくりの基礎知識」ということで、建築に関する様々な分野の知識を一般的に、教科書的に解説するのですが、それぞれの講師の独自のスタイルが垣間見えて、この本の面白さになっています。

家を作るのは最終的に専門家へ任せるのですが、知識を得、建築への理解を少しでも深め、専門家と話し合えるようになることで、より良い住宅を建てることができるのではないでしょうか。少なくとも損にはなりません。
一読するだけではへええで終わってしまいそうですが、疑問が湧いた時開けるように、手元に置いておくのもいいかもしれません。